講習会での学び「精神科領域の鍼灸治療の最前線」

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講習会での学び「精神科領域の鍼灸治療の最前線」

 昨日は半日お休みを取って、令和5年度第4回東京都委託施術者講習会「精神科領域の鍼灸治療の最前線―医鍼連携のネットワーク構築を目指してー」の講習会に参加しました。

 東京都はりきゅうあん摩マッサージ指圧師会(通称都師会)が東京都の委託事業として開催されている講習会で、学生も鍼灸師も無料で参加できます。

 今回の講師の先生は松浦悠人先生。東京有明医療大学の先生でうつ病の臨床と研究をされています。

 うつ病の鍼灸治療といえば呉竹の船水先生が有名で、私も学生のときに授業を受けたので少し知識はありましたが、また違うアプローチやお話が聞けてとても学びの多い講習会でした。

画像は都師会のHPよりお借りしました

うつ病とは

 生涯でうつ病になる確率はどれくらいだと思いますか?
なんと5.7%、つまり20人に1人がうつになる時代、病院で診断された人数がその割合なので、うつ状態の人を入れるともっと数字は高くなると思います。

 うつ病の標準治療は薬物療法です。でも薬は症状を抑えているだけで根本的な原因や自律神経の乱れには対応できません。

 イギリスの研究では、標準治療に加え、鍼治療を重ねることでうつ症状が改善されたというデータがあり、松浦先生の研究でも母数は少ないながら、週に1回、合計8回の治療で不眠や消化器症状が改善されたとのことです。

 当院の患者さんにも過去にうつ病を患った方や、現在、服薬中の方がいらっしゃいますが、鍼灸治療を受けることで、不眠や食欲不振、便秘や下痢の症状が改善されています。

うつ病に対する鍼灸治療

 座学の後は、松浦先生による治療デモがありました。触診の方法からチェックすべきポイント、頭皮への鍼通電や足部への鍼通電など、エビデンスのある治療方法を教えていただきました。

 経穴(ツボ)の研究は世界で行われていて、なんと奥の細道で有名な「足三里」のツボには抗炎症作用があると発見されたとのこと。うつ病は脳の炎症反応でもあるので、「足三里」を使うことで炎症を抑えることができるのですね!

 ポイントは鍼を刺す深さで、通常、消化器の症状に対して鍼をするときは深く刺しませんが、抗炎症反応を出したいときはしっかり筋肉や骨膜にまでとどくように刺鍼して電気を流す必要があります。パルスの周波数は10ヘルツで0.5mAと感じないくらいの微弱電流とのこと。

治療器は当院でも多用しているセイリンさんのピコリナを使用されていました。

 私たちの身体にはもともと微弱な電流が流れていて、これを「生体電流」と言います。「生体電流」は、体内で常に起きている微弱な電気で、正常な身体の状態を保つために重要な役割を担っています。

 血液やリンパの流れ、脳や心臓の動きはこの生体電流によって機能しているので、微弱電流を流すことで、生体電流の流れを正常に導いているのですね。

 治療方法はお腹や皮膚の反応から東洋医学的な考え方でツボをとり、またデルマトームやエビデンスベースの西洋医学的な鍼灸と組み合わせることで、私が臨床で行っている治療ととても似ているなと思いました。

 学生のときは基本、健康な人同士で練習をするのでツボの反応などよくわかりませんでしたが、臨床に入ってからは、自律神経に乱れがある患者さんの触診をするので、ツボの反応が明らかに出ていて、特に背部はデルマトームと一致していることが多いです。

鍼灸と精神医療の連携を目指して

 今やコンビニよりも多い鍼灸院や鍼灸マッサージ院。基本、自由診療ということもあり、高齢者の訪問マッサージなどを除くと医療と連携していないのが現状です。

 松浦先生は、鍼灸師と精神科の連携強化を目的としてAPネットワークに取り組まれています。私もメーリングリストに早速登録しました。精神医療に関するオンライン勉強会を定期開催されているそうなので、学びを続けていきたいです。

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